不器用上司のアメとムチ

ほぼ無表情で席につくあたしとは対照的に、さくらさんはにこやかにあたしに笑いかける。


「初めまして。京介さんからお話は伺っています。あなたが現副社長秘書の姫原さんですね」


そう言ってあたしを見つめる彼女は、自分で言うのもなんだけど……セミロングのストレートヘアや、二重まぶたの大きな瞳が、完全にあたしとかぶっていた。

なるほど、京介さんに選ばれるわけだ……


「……こんにちは」


あたしは彼女の笑顔に応えられず、無愛想に挨拶する。


「今日はさくらさんの為に、この店にしたんだ」

「まぁ。やっぱり!ありがとうございます」


辛気臭いあたしはすぐに蚊帳の外。

二人は恋人同士のように、和気あいあいと話している。


「……ヒメ、彼女は少女時代をスペインで過ごしたそうなんだ」

「そうですか……」


別に無理してあたしに話振らなくていいのに。

あたしにも特に感想はないんだから。


「スペイン語が使えるなら、必ず僕の役に立つよ。コーヒー豆を輸入しているのは、スペイン語が公用語である南米が多いからね」

「ええ、必ずお役に立って見せます」


スペイン語……そうか。

この人は顔以外にも武器があるんだ……

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