不器用上司のアメとムチ

「ところでヒメ、スペインはどの辺りにあるのかは知っているのかな?」


不意に、京介さんがあたしにそんな質問をしてきた。

スペインの場所なんて、あたしが知るわけがない。

だから素直に、首を横に振った。


「さくらさん、言った通りだろう?」

「本当でしたのね。姫原さんって面白い方だわ」


クスクスと笑い合う二人からは、いやな感じが滲み出ていた。

あたし、バカにされてるんだ。

……大丈夫。こんなの、慣れてる。


「ちなみに南米はどう?」


京介さんはなおも人をバカにする遊びをやめない。

でも、南米ならあたしにだってわかる。

米はアメリカだもん。南は南だもん。


「アメリカの、南部」


ぼそっと答えると、二人は顔を見合わせて同時に吹き出した。

ち、違ったの……?


彼らの反応が予想外で、必死で殺してきた感情が表に出そうになる。


どうしよう……恥ずかしい。

< 171 / 249 >

この作品をシェア

pagetop