不器用上司のアメとムチ
「ところでヒメ、スペインはどの辺りにあるのかは知っているのかな?」
不意に、京介さんがあたしにそんな質問をしてきた。
スペインの場所なんて、あたしが知るわけがない。
だから素直に、首を横に振った。
「さくらさん、言った通りだろう?」
「本当でしたのね。姫原さんって面白い方だわ」
クスクスと笑い合う二人からは、いやな感じが滲み出ていた。
あたし、バカにされてるんだ。
……大丈夫。こんなの、慣れてる。
「ちなみに南米はどう?」
京介さんはなおも人をバカにする遊びをやめない。
でも、南米ならあたしにだってわかる。
米はアメリカだもん。南は南だもん。
「アメリカの、南部」
ぼそっと答えると、二人は顔を見合わせて同時に吹き出した。
ち、違ったの……?
彼らの反応が予想外で、必死で殺してきた感情が表に出そうになる。
どうしよう……恥ずかしい。