不器用上司のアメとムチ
12.満身創痍の告白
あたしは無我夢中でお店を出たあと、フラフラとあてもなく街を徘徊していた。
家に帰ろうにも、どっちに行けば駅があるのかわからない。
こんな顔じゃ、誰かに道を尋ねることもできない。
「あたしって……必要ない人間なのかな……」
そんな独り言を呟いてしまうほどに、あたしは相当深いところまで落ち込んでしまっていた。
失恋は何度か経験してるし、それよりつらいいじめを受けたり陰口を叩かれることはよくあった。
その時だって、こんな風に思うことなかったのに……あたしは大人になってずいぶん弱くなったみたいだ。
しばらく歩き続けて通りかかった交差点には見覚えがあって、ようやく家に帰れる、と安堵したときだった。
横断歩道の手前で信号待ちをするあたしを、一人の女の人が駆け足で追い越した。
危ないな……信号無視?
そのまま反対側の歩道に行くものだとばかり思っていたのに、彼女はまるで車道を塞ぐように横断歩道の真ん中で立ち止まった。
一瞬だけ見えた横顔……
それが知り合いのものだと気づいた刹那、あたしの足は勝手に地面を蹴っていた。
大きなトラックの音が、間近に迫っていた。