不器用上司のアメとムチ
「森永さん……!!」
叫ぶように言って、力一杯彼女の背中を押した。
その身体が歩道に倒れ込むのを見て安心したのもつかの間……
キキイ―――!!
耳をつんざくようなブレーキ音が鳴り響いて……
あたしはギュッと目を閉じ、自分の終わりを覚悟した。
「――――小梅!」
その瞬間聞こえたのは、あたしをさんざん弄んだ憎い男の声……
ああ、死ぬ前に言い訳くらいちゃんと聞いてあげればよかったな……
あたしは身体がどこかに投げ出されるのを感じながら、そんなことを思った。