不器用上司のアメとムチ

「森永さん……あそこで倒れてるのって……」


違うよね。


違うよね。


声が聞こえたのも空耳だよね。


決して他人なら怪我をしてもいいというわけじゃない。

それでも、“彼じゃなければいい”と思わずにはいられなくて、あたしは震える声で森永さんに尋ねた。



「私の、せいで……っ」



森永さんは泣きじゃくり、両手で顔を覆ってしまう。



「ごめんなさい……私のせいで、久我さんが……っ」



わあぁ、と泣き崩れる彼女。

近づいてくる救急車のサイレン。


あたしは、倒れている男性にもう一度だけ目をやり……

彼のズボンのポケットから見たことのある飴の包み紙が覗いてるのを確認すると、ショックで意識が遠のくのを感じた。

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