不器用上司のアメとムチ
目が覚めたとき……一番にあたしの目に入ったのは、心配そうな佐々木の顔だった。
「梅チャン……大丈夫?」
そう言って、眉尻を下げる佐々木。
来てくれたんだ……あたし、もう管理課の人間じゃないのに……
「ん……たぶん。ここ、病院だよね?」
「そうだよ。マジびびったし……森永さんから連絡もらったとき」
「あ……その森永さんは?」
彼女と話がしたいと思っていた。
どうして、あのとき横断歩道に飛び出したのか……その理由が、聞きたくて。
「森永さんは今……久我さんのとこにいる」
今まで柔らかかった佐々木の表情が、急に強張る。
そうだ――――。久我さん……!!
現実から目を逸らしたくて、きっと記憶のふたが勝手にしまっていたのだろう。
あたしは佐々木に言われて初めて、あたしを助けてくれたあの人のことを思い出した。
「佐々木……!久我さんの病室はどこ!?」
「ちょっと待って。先に先生呼んでくる。梅チャンが目覚めたこと知らせなくちゃ」
そんなの、どうだっていいのに……!!
私の苛ついた表情に気付くと、佐々木は「俺が居なくなったら勝手にベッド抜け出しそうだから、ナースコールにしよ」と言って、ベッドの上からぶらさがるボタンに手を伸ばした。