不器用上司のアメとムチ

「失礼します!」


声高にそう言って、小出さんが副社長室の扉を勢いよく開ける。

ああもう逃げられない。京介さんには会いたくないのにな……

泣きそうになりながら小出さんについていくと、デスクに頬杖をついて何か考えているような京介さんの姿があった。


「副社長!ちょっとお話があるんですけど!!」


小出さんの呼び掛けに、彼はぴくりとも反応を示さない。


「聞いてるんですか!?副社長!!!」

「え……何か言った?」


ようやく返事をした京介さんは、ぼおっとしたままの表情であたしたちを見た。

いつもの京介さんじゃない……?そう思って小出さんの顔を見たけど、彼女は首を横に振って、厳しい表情をした。

やることはやらないと!……そんな目だ。


「私たち、あなたを一発殴ろうと思ってここへ来たんですけど!!」


あぁ、言っちゃった……

それにしても小出さん……私“たち”って。

あたしは別に殴りたくなんてないんですけど……

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