不器用上司のアメとムチ

「……どうして違うんだろう」


ぶたれた頬を華奢な手で撫でながら、京介さんが呟く。


「違う……?」

「……ああ。昨日の夜、実はある女性にこんな風に平手打ちされたんだけどね……
その時から僕は少しおかしいみたいなんだよ」


疲れた様子でそこまで話した京介さんは、ふらふらと倒れ込むように椅子に腰を下ろした。

もしかして具合でも悪いんじゃ……と、少し心配に思っていると、京介さんはぶたれてない方の頬まで赤く染めて、こう呟いた。


「……彼女のことを思うと脈が早くなるし、動悸がして息苦しくなる。食事も喉を通らないし仕事でつまらないミスをしてしまう。
……これは一体何の病なんだろう」


はぁ、と悩ましいため息をついて頭を抱える京介さん。

あたしは小出さんとそれを眺めながら、初めて自分以外の人間に対してこう思った。


この人、馬鹿……?

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