不器用上司のアメとムチ
「あの……京介さん?」
「ん?」
「それ……たぶん、恋してるだけだと思うんですけど」
「こい……鯉……恋……?」
あたしの発言に衝撃を受けたのか、何度もコイコイ呟く京介さん。
さくらさんが、「あんな馬鹿な男の秘書はやってられない」と怒ったのも、なんとなくわかる気がした。
「この僕が、自分自身よりも好きになる相手など居るはずが……いやでも、やはりこの締め付けるような胸の痛みは……」
加えて、このナルシスト発言。
もう呆れてものも言えない。
っていうか、やっぱりあたしのことなんて好きでも何でもなかったんだ……
よくもまぁ、甘い台詞をぽんぽん言えたものだ。
「……じゃあ、あたしたちはこれで」
一発殴れたことだしね……
「――――待ってくれ!!」
あたしたちが扉に向かおうとすると、京介さんが慌てて椅子から立ち上がり行く手を阻んだ。
「その……恋とやらのことをもっと詳しく聞かせてくれ」