不器用上司のアメとムチ
半ば無理矢理引っ張られて入った病室では、久我兄弟と渚さんがなにか話し込んでいた。
あたしの姿に一番に気づき、手招きして、「ここに座れ」と渚さんの隣のパイプ椅子を指差したのは、久我さん。
怪我の状態は昨日とあまり変わっていないみたいだけど、あたしを見る目が優しかったので少しだけほっとした。
あたしがそこに腰を下ろし、隣で光くんがママの膝の上に乗るのを待って、久我さんが口を開く。
「……俺は昨日、こいつらの家に招かれててそこに向かう途中だったんだ。光の誕生日を祝うためと、それから……自分の過去にケリをつけるために」
過去……。
あたしは思わず渚さんをちらりと見てしまった。
それを不思議に思ったのか、久我さんが訊く。
「……お前、なにか知ってるのか?」
……あれを出すなら、今だ。
あたしは無言で鞄から手帳を取り出し、あの写真を持ち主の手に返した。