不器用上司のアメとムチ

「これ……お前が持ってたのか」

「前に、駅で久我さんが落としたのを拾って……返すタイミングがなかなかなくて。それに少し……怖かったんです。この写真に映っている人が、久我さんとどんな関係なのかを聞くのが」

「…………今も怖いか?」


否定したいところだったけど、あたしは小さく頷いた。

写真の女性……今目の前にいる渚さんには旦那さんも可愛いお子さんもいるけど……

その旦那さんが久我さんの双子の兄弟であることがいやでも心に引っ掛かる。


「今は光がいるから全部を話すわけにはいかないが……俺の過去がどんなものでも、お前にはそれを受け入れてその上で一緒にいて欲しいと思ってる。
何もなかったような顔してお前と付き合えるほど、器用じゃないんでな」

「久我さん……」


そんなにも真剣に、あたしとのことを考えてくれていたんだ。

それならあたしも覚悟を決めなきゃ。逃げずに、久我さんの過去と向き合うんだ。

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