不器用上司のアメとムチ

「聞かせて下さい……もっと、ちゃんと、全部全部。
さっき自分でも言ってたじゃないですか……全部を受け入れた上で自分と付き合ってほしいって。
なのに今、重要な部分を省いて話したでしょう?
教えてください……あたしのこと、信じて……?」


「小梅……」


あたしは、梨を袋に戻して布団の上に出ている久我さんの手を握った。

彼が少しでも安心して話せるよう、体温を分け合って同じにする。

久我さんはしばらく目を閉じ何か考えたあとで、ゆっくり口を開いた。


「さて。どっから話すかな……」


そうしてぽつりぽつりと、彼は話し始めた。


渚さんとは幼馴染みだったこと。


高校のときから大人になるまで付き合っていて、結婚まで考えていたこと。


クリスマスにプロポーズしようとしたけど、聡さんの嘘によってそれは叶わなかったこと。


それからの苦しい日々と

久我さんの中で膨れ上がった嫉妬が、渚さんを傷つけた五年前の悲しい出来事を……

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