不器用上司のアメとムチ
「……渚はもう、俺を許すと言ってくれた。それよりも俺への罪悪感でどうにかなりそうな聡を助けるために、俺の口から聡のしたことを許すと言ってやってくれと頼まれて……」
そっか……さっきの久我さんと聡さんの会話は……
久我さんにはあたしがいるから、もう聡さんは過去のことで悩む必要ないって、そういう意味だったんだ。
「……だからもう、俺は過去にとらわれずに自分の心底惚れ込んだ女を抱き締めたいんだが……
今のを聞いて、俺に失望したんなら出ていってくれ。
でも、もしもこんな俺でいいと言うなら……」
失望なんて、するわけがない。
話を聞く限り、誰が悪いってはっきり言えない状況だったみたいだし……
渚さんには、聡さんがいる。
可愛い光くんも。
だから久我さんのことは、あたしが幸せにしてあげたい……
「――――なに言ってるんですか、今さら」
久我さんが言い終わる前に、あたしはそう言って微笑んだ。
「あたしの気持ちは昨日寝たふりして聞いていたんでしょう?もちろん渚さんとのことは驚いたし、ショックでもありますけど、だからって……久我さんが好きだって気持ちに変わりはありません。
それに恋心をそんな簡単に捨てられないってことは、久我さんが一番よく知ってるでしょう?」