不器用上司のアメとムチ
さっきは、「こんな俺でもいいなら」なんて謙虚なこと言ってたくせに……
やっぱり、本性はオオカミだ。
でも、そんなところも好きなのだから仕方ない……
あたしは、久我さんの唇にそっと自分の唇を重ねた。
あたしの後頭部を包む彼の手は、昨日みたいに強引なことはしてこなかった。
その代わりに、ゆっくりとした手つきであたしの髪を梳き、指先から愛しさが伝わってくるようだった。
触れるだけのキスでも離れるときはやっぱり名残惜しくて、熱に浮かされたような瞳をした久我さんは言った。
「……早くお前を抱きてぇのに……この体がな」
「治るまで……どれくらいかかりそうなんですか?」
「二週間以上と医者は言ってた」
「そんなに……?」
思わず漏れてしまったその言葉は、久我さんの心配が半分。
そして、もう半分は……
「……そんなに俺としたいか」
「え……っ!ちが……、いや、違くもないですけど……って何言わせるんですか!!」
あたしは図星を突かれて熱くなった顔を、手でうちわの形をつくってパタパタと扇いだ。