不器用上司のアメとムチ
「久我さん……?」
「小梅……そこのブラインド下げるの手伝ってくれ」
「ブラインド?……はい」
いつもは別にそのまま帰るのに、どうして今日は下げるんだろ。
首を傾げながらも、さっき森永さんと小出さんを見送った廊下側の窓を、ブラインドで塞いでいく。
最後の紐を引き終えると、あたしは久我さんの元に駆け寄った。
「よし。じゃあ、早く行きましょう!急がないと間に合わないか、も――――――」
言い終わる前に突然、あたしは彼に抱き締められていた。
「どうしたんですか……?」
「どうしたも何もあるか。……もう、限界だ」
限界……?
あ、もしかして――――
「ここ、会社だってわかって言ってます?」
「理性ではな」
「じゃ、じゃあその理性がまだ残っている間に出ましょう!佐々木たちを待たせちゃ悪いし」
「――――うるさい」
不機嫌そうな声とともに、あたしの唇には硬くてまあるいものが押し当てられていた。
なにこれ……?
「これ舐めときゃ声も出ねぇだろ……」
そして唇の隙間から放り込まれたものは、甘いミルク味のキャンディーだった。