不器用上司のアメとムチ

京介さんが部屋を出る前に、久我さんが彼に問いかけた。


「……で、何で急にうちの課の飲み会なんか参加する気になったんだ?」


振り向いた京介さんは、意味深に鼻で笑ってこんなことを言った。


「そりゃあ、来週から僕もこの課の一員になるからさ」


……え。えええ〜〜〜!?


「……そりゃなんの冗談だ」


久我さんが、頭痛を抑えるように額に手を当てながら訊く。


「冗談なんかじゃないさ。僕は副社長でなくなるんだ」

「……なんで」

「それは向こうで話すよ。……お酒の力を借りないと言えそうにないんだ」


そう言ってあたしたちに背を向けた彼の後ろ姿は、今まで見たことのない哀愁が漂っていた。

もしかして、あの想い人に振られちゃったとか……?

いや、だとしても副社長でなくなることとは関係がないよね。


「……小梅」

「あ、はい」

「あっち行ったら俺が飲みすぎないよう見張っててくれ」

「……?はい。でも、今日ぐらいはいいんじゃないですか?主役なわけだし」

「いいわけあるか。今酔ったら、店のトイレででもお前を犯す自信がある」

「お、おか……っ」

「だから、それが嫌なら見張ってろ」

「……了解しました」


うう、飲み会、どうなっちゃうんだろ……

< 225 / 249 >

この作品をシェア

pagetop