不器用上司のアメとムチ
京介さんが部屋を出る前に、久我さんが彼に問いかけた。
「……で、何で急にうちの課の飲み会なんか参加する気になったんだ?」
振り向いた京介さんは、意味深に鼻で笑ってこんなことを言った。
「そりゃあ、来週から僕もこの課の一員になるからさ」
……え。えええ〜〜〜!?
「……そりゃなんの冗談だ」
久我さんが、頭痛を抑えるように額に手を当てながら訊く。
「冗談なんかじゃないさ。僕は副社長でなくなるんだ」
「……なんで」
「それは向こうで話すよ。……お酒の力を借りないと言えそうにないんだ」
そう言ってあたしたちに背を向けた彼の後ろ姿は、今まで見たことのない哀愁が漂っていた。
もしかして、あの想い人に振られちゃったとか……?
いや、だとしても副社長でなくなることとは関係がないよね。
「……小梅」
「あ、はい」
「あっち行ったら俺が飲みすぎないよう見張っててくれ」
「……?はい。でも、今日ぐらいはいいんじゃないですか?主役なわけだし」
「いいわけあるか。今酔ったら、店のトイレででもお前を犯す自信がある」
「お、おか……っ」
「だから、それが嫌なら見張ってろ」
「……了解しました」
うう、飲み会、どうなっちゃうんだろ……