不器用上司のアメとムチ

やっぱり管理課っていいなぁ……そう思って、メンバーの顔を見渡していたときだった。


「……幸せでないのは、どうやら僕だけみたいだな……」


お祝いムードを一気にぶち壊す、暗い暗い声がどこかから聞こえてきた。

声はすれども姿は見えず……いったいどこ?と思ったら、京介さんは自分の席の座布団の上で身体を丸めて横になっていた。

その姿に王子オーラは一切なく、うじうじと、割り箸の袋を弄んでいる。


そう言えば、お酒が入ったら京介さんの事情を教えてくれると言っていたっけ……

きっと話を聞いてほしいから、こんな風にいじけてるんだよね。


「京介さんは……どうして管理課に?」


あたしが訊くと、彼はカッと目を見開いて飛び起き、かと思えばテーブルの上にぐたっと突っ伏したり、完全な酔っ払いと化していた。


「まさかこんな酔い方をする人だとはねぇ……もう、こないだから王子には幻滅しっぱなしよ……」


小出さんがやれやれという感じに首を横に振りながら言う。

すると、テーブルに伏せていた京介さんがむくっと起き上がり、目が据わった状態でこんなことを言う。


「幻滅するのはまだ早いよ……」


そのままゆらゆらと立ち上がり、今日の参加者全員を一度ずつ見た京介さんは、すうっと大きな息を吸い込んでからはっきり言った。




「――僕は会社の金を使い込んだんだ」




久我さんがビールを吹き出し、佐々木は青いカクテルをテーブルにぶちまけ、小出さんの手から箸が落ちた。


森永さんとあたしはただ、口を開けて呆然としていた。


だって、会社のお金を使い込んだなんて……!

そんなの、信じられるわけ……

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