不器用上司のアメとムチ

「……いい加減、シャワー浴びなきゃ」


はぁ、とため息をついて立ち上がり、シャツのボタンに手を掛ける。

ちょっと着ただけだから、そのまま戻していいかなぁ……

そんなことを考えながら、プチプチとボタンを外しているときだった。



「…………なんつー格好をしてるんだお前は」

「あ……」


いつの間に起きたんだろう。まだちょっと気だるそうな久我さんが、あたしの背後に立って苦笑していた。

どうしよ……シャワー浴びたくて服借りましたって言えばいい?


「俺を挑発してる、と取っていいのか?」

「ま、まさか……!あたしはただシャワーを浴びたいから着替えを探してて……」

「……だとしてもなんで今着てるんだ。下着まで外して」

「う……」


……これは白状するしかなさそうだ。あたしはうつむきがちに、口を開いた。


「……久我さんに抱き締められてる気分になれるかなって……」

「は……?」

「だって寝ちゃうんだもん……放っておかれて寂しかったんです」

「……そうか。それは悪かった。で、満足したのか?その服で」


……久我さんの意地悪。そんなわけないじゃない。

あたしがむくれていると、ふっと彼が笑う声がして後ろから抱き締められた。


「待たせたな……小梅。ここは会社じゃねぇしもう誰にも邪魔されないから、お前の全部見せろ」

「シャワーは……?」

「んなもん後に決まってんだろ……」


ぐい、と顎を掴まれて、強引にキスをされた。

あたしはそれでもう、ノックアウト。

ただ彼のくれる刺激を受け止めて、ため息を漏らすしかできなくなってしまう。

< 238 / 249 >

この作品をシェア

pagetop