不器用上司のアメとムチ
寒くて、けれど星がきれいな冬の夜。
白い息を吐き出しながら二人並んで歩き、しばらく進んだところで久我さんの方から手をつないでくれた。
あたしのように、久我さんも柏木さんたちを見てちょっと感化されたのかな……
そうだったら嬉しいな、と思いながら、あったかくて大きな手を握り返す。
明日は土曜日だから、泊まってもいいかな……
そう聞きたいけど、なんとなく今はこのまま静かに歩いていたくて、駅に着くまであたしは黙っていた。
そして駅前の明るさが近づいてくると、久我さんはあたしからぱっと手を離した。
それがなんだか焦ったような動作だったから、あたしは急に寂しくなってしまう。
久我さんは、あたしともっと一緒に居たくないのかな……?
週末だけど、別々に帰るつもりなのかな……?
自分から言い出せばきっと受け入れてくれることはわかってるけど、久我さんの方から言ってほしいという微妙な乙女心を持て余しながらうつむいていると、彼があたしの前にスッと手を差し出した。
そこにはいつものように、ふたつの飴玉が。
「……どっちにする?」
包み紙に描かれた絵は、2つとも小さな苺。どっちも何も、同じものじゃない……
「どちらかに当たりが入ってる」
「当たり……?駄菓子屋さんに持って行けば、もう1個もらえるってやつですか?」
あたしの言葉に、久我さんはふっと笑って首を横に振った。