不器用上司のアメとムチ

「もうちょい、マシな当たりが入ってるはずだ」


あたしは腕組みをして、うーんと首を回す。


「じゃあ、こっちにします」


片方を手に取り、すぐに包みを開こうとしたら久我さんの手にそれを制された。


「……家まで我慢しろ」

「なんでですか?っていうか今日久我さんちに行きたかったんですけど……」

「今日はダメだ」

「そう、ですか……」


弾みとはいえ、せっかく自分から言ってみたのに……
こんなにアッサリ断られちゃうなんてショックだ。


「じゃーな。それは絶対家まで開けんなよ」

「……はい」


もう帰っちゃうの……?

なんだか、いつもより冷たくないですか……?

あたしの縋るような視線には気づかない様子の久我さんは、あっという間に改札を通ってホームへ続く階段を上って行ってしまった。


「さみしい……」


それにしても、この飴が一体なんだっていうんだろう。

久我さんはもう見てないし、気になって仕方がないから開けちゃおう……


あたしは包み紙を、ピッと横に引っ張った。


出てきたのは、あたしの好きなピンクの苺飴……

そして、その飴をまるでお姫様に見立てたように、丸いピンクに銀のティアラのようなものが……

ううん、ティアラ……じゃなくて、これは……


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