不器用上司のアメとムチ
別々に帰ろうとしていたのが照れ隠しだとわかった今、あたしたちは二人並んで電車に揺られていた。一緒に久我さんのアパートに帰るためだ。
「もし、あたしが指輪入りの飴を選ばなかったらどうするつもりだったんですか……?」
「……考えてなかったな。お前なら選んでくれる気がした」
「うそ……だってあたし、当てずっぽうで選んだのに」
「お前はどうあがいても、俺の所に来る運命なんだよ」
……久我さん。そんな恥ずかしいことが言えるなら、指輪だってちゃんと渡してくれればいいのに……
不器用なくせに、あたしのこと全力でドキドキさせてきて。
照れ屋なくせに、嫉妬深くて独占欲強めで。
あたしはそんなあなたが……
「久我さん」
「ん?」
満員という訳じゃないけど、それなりに混んでいる電車の中で、あたしは彼にこっそり「大好き」と耳打ちした。
耳まで赤くなった彼がお返しにと耳元で囁いた言葉で、あたしの胸に幸せが満ち溢れた。
それはきっと、苺キャンディーのようなピンク色で。
飴に負けないくらい、甘くて美味しいキモチ。
そしてきっと今夜も、あたしは飴細工のようにとろとろに溶かされてしまうんだ。
「――――小梅、愛してる」
本当は誰より情熱的な
あなたの愛の囁きで…………
-end-