不器用上司のアメとムチ
3.チャラ男の事情
「――梅、これコピー。枚数は全課の班長以上の役職者分」
「え……それって何枚ですか?」
「名簿を見て自分で考えろ。朝お前の机の上に置いといた」
――管理課に配属になって二日目。
宣言通り、久我さんは昨日よりちょっと厳しい。
森永さんたち三人は、昨日ほどあたしに突っかかってこない。というか、完全無視って感じだ。
それはそれで居心地が悪いけど、悪口を言われるよりはまし。
あたしは久我さんに頼まれたコピーをさっさと済ませてしまおうと、自分のデスクで名簿とにらめっこを始めた。
「36人……、かな」
枚数を決めて立ち上がり、コピー機の前に移動する。
すると、廊下に面したガラス窓から、見たことのない女性社員があたしを手招きした。
「…………?」
そのまま管理課から出ると、いきなり駆け寄ってきた彼女があたしの両手を握った。
「あの、お願いがあるんですけど……!」