不器用上司のアメとムチ

「深山サン……他には何か言ってた?」


メモを受けとると、いつになく不安を滲ませたような顔つきで、佐々木があたしに聞いた。


「……別になにも」

「……そっか。サンキュ」


佐々木があたしにお礼を言うなんて……ますます、深山さんとの関係が気になる。

でも、もうあたしの役目は終わったし、これ以上さぼったら久我さんに何言われるかわかんないし……

あたしは仕方なく、自分の席に戻ってタイムカードの処理を始めた。


深山さんが来たこと以外は平和だった午前中が終わると、一番に席を立ったのは佐々木だった。


「休憩行ってきまーす」


チャラついた声でそう言う彼の表情は、いつもと変わらない。

そのまま管理課から出ていく姿をなんとなく目で追っていると、頭の上にズシッと重いものが……


「お前は気が多いな。柏木の次は佐々木か」

「……久我さん。なんですかこのひじは……」


声の主はあたしの頭をひじ掛けにして立っているようだ。

お……重い。

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