不器用上司のアメとムチ

そのカフェは、ランチタイムと言うこともあり混雑していた。

けれど先に来ていたコーヒー開発課の人たちが席を確保してくれていたから、あたし達は行列に並ばず店内に入ることができた。


「――よう、待たせたな」


久我さんが片手を挙げて近づいていった先には、麗しの柏木さんと、もう一人……


「――初めまして。コーヒー開発の吉沢です。きみが噂のお姫さまだね?」


わ、どうしよう。ここにもイケメンさんが。

かなり年上に見えるけど、柏木さんの涼しげな目元と対照的なたれ目がどこか可愛らしいナチュラルなイケメンさん……


「梅、ときめいてるとこ悪いがこいつも妻子持ちだ」


久我さんがそう言って、空いてる席にどかっと腰を下ろす。


「……言うの早いですよ。もうちょっと夢見せてくれたって」

「休憩は短けぇんだからさっさとなに食うか決めろ」

「…………はぁい」


口を尖らせて席につこうとすると、空いていたのは吉沢さんのとなりだけ。

向かい側は、柏木さん。

うわぁ、なんだか贅沢な時間になりそう……!

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