不器用上司のアメとムチ
「もう一人、女みたいな奴がいたろ。あいつはどうした?」
久我さんがお冷やを傾けながら訊く。
「ああ、石原は計画連休で……」
「ニューカレドニア。昨日写真付きでメール来てましたけど、速攻で消しました」
「え、どうして?」
「アイツの水着姿なんて見てどうしろっつーんですか。木原の写真見せろっつったら、“勿体なくて見せられません”とか言いやがるし」
柏木さんが吐き捨てるように言うと、吉沢さんが相変わらずだな、とクスクス笑う。
あたしはイケメン達の会話をただぽおっとしながら聞いていたから、話の矛先が自分の方へ向いたことに気づかなかった。
「――で、この子が霞の餌食になって久我のところに?」
「ああ。全く自分勝手なところはいつまで経っても変わりゃしねぇ」
吉沢さんと久我さんが、揃って苦笑した。
……霞。
京介さんのこと……?
聞こうとしたら料理が運ばれてきて、あたしは開きかけた口をつぐんだ。