不器用上司のアメとムチ

柏木さんは、ジェノベーゼ。

吉沢さんは、蛸とトマトの塩系パスタ。

うーん、イケメンにお洒落パスタって、画になるなぁ。それに比べて……

あたしはたらこパスタを頬張りながら、自分の上司をちらりと見る。

口の周りを赤くしながらガツガツナポリタンを食べる姿は、まるで野獣だ。


「久我さん、汚いです」


あたしはテーブルの上の紙ナプキンを三枚引き抜いて、野獣に渡す。


「おお、さんきゅ」


あっという間にお皿を空にした彼は、これまた品の欠片もない仕草で口元を拭い、爪楊枝に手を伸ばした。

しーはーされたらどうしよう……

久我さんのこと嫌いになるかも。


さすがにそれは考えすぎだったらしく、彼は意外にもちゃんと口元を手で隠して歯のお掃除をしてくれたから、あたしはほっと胸を撫で下ろした。

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