不器用上司のアメとムチ
与えられた仕事を急いで終わらせて、終業時間の18時を迎えたとき、幸い管理課に久我さんの姿はなかった。
彼が帰ってきてまた新たな仕事を言いつけられる前に、佐々木に頼まれた用事を済ませてしまおうと、あたしは席を立つ。
「……あのさ」
ふと、正面に座る佐々木がパソコンから視線を上げてあたしを見た。
「……もしやばそうだったら、逃げていいから」
それだけ言うと、またパソコンの作業に戻ってしまう。
「やばそうって、何が?」
深山さんの仕事を手伝うだけなのに、やばいって、何よ。
そんな中途半端に言われても気になるだけなんですけど……
「……いや。たぶん行けばわかるから」
結局佐々木はそれ以上のことは何も教えてくれなかった。
いやな予感しかしないけれど、あたしは仕方なく外に出て緑テントに向かう。
相変わらず暗くて汚いその場所に着くと、まだ深山さんの姿はなかった。