不器用上司のアメとムチ
「……深山もいいけどあんたの方が上玉だ。佐々木もたまには気の利いたことするんだな」
だらしなく緩んだ口元を動かしてそう言った男は、満足そうに目を細めてあたしを見た。
あたしは背筋がぞくりとして、思わず後ずさる。
今……やばい時、かもしれない。
でも、逃げ出そうとしても足が動かない。
……そうだ、大声を出せば通りかかった人が気づいてくれるかもしれない。この間の柏木さんみたいに。
そう思って思いきり息を吸い込んだのだけれど……
「んー!!んんー!!」
「――――声出したら、佐々木と深山の秘密をばらすからな」
男はあたしの背後に回り、大きな手で口を塞ぐと、耳元でそんな意味のわからないことを囁いた。
あの二人の秘密……?
あたしはそんなの知らないのに、なんでこんな目に遭ってるの……?
「もう諦めな。ここは滅多に人が来ない……」
生温かい息が首筋にかかり、鳥肌が立つ。
男の手が、服の上から乱暴にあたしの胸を掴んだ。