不器用上司のアメとムチ
佐々木は、まだ管理課にいた。
自分のデスクで椅子に深くもたれ掛かり片手で目を覆っていて、なんだか疲れた様子だ。
「オイ、起きろ」
久我さんがぶっきらぼうに声を掛けると、ぱっと姿勢を正した佐々木。
「久我さん……と、梅、チャン」
「コイツになんか言うべきことがあんだろ」
久我さんが、あたしを顎で指して言う。
「あ、えと……無事みたいでなにより」
「――馬鹿!無事じゃねえよ。俺が行かなかったらどうなってたと思ってんだ!……ったく、梅もなんか言ってやれ」
そう言われて、あたしは佐々木を見た。すまなそうに眉を下げ、あたしと目が合わないように下ばかり見てる。
危ない目に遭ったのは、確かに佐々木のせいでもあるけど……
しゅんとした様子の彼を見ていたら、怒ったり責めたりするのは何か違う気がした。
「佐々木と、深山さんの秘密ってなに……?」
あの村山とかいう男は、それを切り札みたいに言っていた。
そのせいで襲われたあたしには、聞く権利があるよね……?