不器用上司のアメとムチ

「もういいよ佐々木。あたしのことはあのオジサンヒーローが助けてくれたし。
それより、村山さんが逆恨みして深山さんのことを周囲に言いふらしたりしたらどうするの……?」


「俺も……それをずっと考えてたんだけど……」


佐々木が、なぜか照れたような顔をして頬をぽりぽりと掻く。

そして覚悟を決めたように顔を上げると、凛とした声で言った。




「もしもそれで深山チャンが会社に居づらくなったら……

俺が、嫁にもらう」





「佐々木くん……」





佐々木くん……


と可愛い声で言ったのはあたしではない。

だって、いきなり嫁って。

相手の気持ちは確かめたの?


……って、あれ?じゃあ誰の声……



「深山……チャン」



佐々木の視線が、あたしを飛び越えて管理課の入り口に注がれている。

そこには頬を真っ赤に染めて立ち尽くす、噂の彼女の姿。

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