不器用上司のアメとムチ
4.苺キャンディー
「あーあ、幸せそうでしたねあの二人」
駅までの道を久我さんと歩きながら、あたしはわざと膨れっ面をつくった。
なんで隣を歩くのがこのオジサンなんだろうって嫌味をこめて。
「……お前の見た目なら、何もしなくても男が寄ってくんじゃねぇのか?学生時代はそうだったって、自分で言ってただろ」
「……なんていうか、そういうのじゃなくて……」
情熱的な恋がしたい、なんて言ったらデリカシーのない久我さんは笑うんだろうな……
でも、自分でも気づいてる。
王子さまみたいな京介さんのことを忘れさせてくれる、素敵な出逢いなんてそうそうないってことくらい……
「……俺は恋愛はもうこりごりだ。このまま一生独り身を貫く」
「えぇ?久我さんみたいな人でも何か恋愛で痛い目みたことあるんですか?」
「お前な、どういう意味だよ」
「女心に無頓着そうだから、どちらかと言うと傷つける側に見えるんですもん」
「……そうか。ま、間違っちゃいねえよ」
反撃が返ってくると予想して言った軽口なのに、久我さんはぽつりとそう呟いて夜空にため息を吐き出すだけだった。
……なによ。調子狂うじゃない。