不器用上司のアメとムチ
過去に久我さんが好きになったのは、一体どんな女性なんだろう。
痛い目みたってことは、高望みしすぎたとか?
あたしは久我さんの、一日の仕事を終えた証の無精髭を見ながら、彼のプライベートを勝手にあれこれ思い描く。
この年で独身って、寂しくないのかなぁ。
料理とか、洗濯とか、家でちゃんとしてるようにも見えないし……
「……なんだ?」
あたしがジロジロ見すぎたせいか、お髭のオジサンがこっちを向いた。
「あ、えと、一人で家事とかちゃんとやってるのかなって」
「やってるように見えるか?」
「全然」
「それも当たりだ。飯は外で食べるか買ってくるかだし。洗濯は溜まるまでなんもやらねぇし。掃除なんか半年くらいしてねぇ気がするな」
うわー、だから汚いんですよ。
部屋の汚さが顔に出てます。
なんて、失礼なことをあたしが考えてるとは知らない久我さんが、あたしの頭にぽん、と手を置いた。