不器用上司のアメとムチ
「はよざいまーす」
最後に入ってきたのは見るからにチャラそうな茶髪の男。
彼はあたしの姿を見るなり玩具でも見つけたような顔で、こちらに向かってきた。
「もしかして、姫原小梅サン?」
「……そう、ですけど」
あたしが答えると、チャラ男はにぃっと笑みを深めて、すくい上げるようにあたしを下から眺めた。
「ほーんと、頭悪そーな顔してるね」
「なっ……!?」
その間延びしたしゃべり方をするあんたの方がよっぽど…!
と、怒りたい気持ちをぐっと堪えた。
あたしは、ここでは一番下っ端。こんな奴でも、一応先輩になるんだ。
管理課は、私以外に四人の課員で成り立っていた。
トップは、久我さん。
感じの悪いショートカットは、二年先輩の森永千紗(もりながちさ)さん。
おばちゃんは小出碧(こいでみどり)という名で、一番の古株なんだそう。
そしてチャラ男はあたしの一つ後輩で、佐々木翔平(ささきしょうへい)といった。
「つーわけで、今日からこの梅……姫原がうちの課に配属になった。誰かにマンツーマンで指導してやってほしいんだが……」
朝礼の最後に久我さんが放った言葉は、予想はしていたけど全員にスルーされて部屋にむなしく響くだけだった。
「……仕方ない。俺がやるか」