不器用上司のアメとムチ
一枚の申請書を作るのに半日かかったあたしは、お昼にはもう頭がオーバーヒートを起こしてデスクの上にへたりこんでいた。
それに付き合った佐々木もかなりへばっていて、「久我さん、明日も休んだらマジ恨む……」とかブツブツ言いながら管理課を出ていった。
「お腹すいたなぁ……」
また食堂に行くタイミングを逃した。
今日はメロンパンを持ってきてくれる人もいない。
「久我さぁん……」
保護者がいないのって、寂しいんだなぁ。
そう思って、誰もいない管理課で彼の名を呼んでみる。
……だめだ、余計にむなしい。
「コンビニ行こ……」
椅子から立ち上がり扉へ向かおうとすると、すぐ近くに誰か立っていたのであたしは心臓が止まるかと思った。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど……」
「吉沢さん……」
そこにいたのは、コーヒー開発課の課長、イケメンだけど既婚者の吉沢さんだった。
「今日、久我休みなんだって?」
「あ、はい……」
「仕事は、順調?」
「……あたしはちっとも順調じゃないですけど、他のみなさんはサクサクこなしてます」
「そうか……なんて報告しようかな」
報告……?
誰に、何を……?