不器用上司のアメとムチ

一枚の申請書を作るのに半日かかったあたしは、お昼にはもう頭がオーバーヒートを起こしてデスクの上にへたりこんでいた。

それに付き合った佐々木もかなりへばっていて、「久我さん、明日も休んだらマジ恨む……」とかブツブツ言いながら管理課を出ていった。


「お腹すいたなぁ……」


また食堂に行くタイミングを逃した。


今日はメロンパンを持ってきてくれる人もいない。


「久我さぁん……」


保護者がいないのって、寂しいんだなぁ。

そう思って、誰もいない管理課で彼の名を呼んでみる。


……だめだ、余計にむなしい。


「コンビニ行こ……」


椅子から立ち上がり扉へ向かおうとすると、すぐ近くに誰か立っていたのであたしは心臓が止まるかと思った。


「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど……」

「吉沢さん……」


そこにいたのは、コーヒー開発課の課長、イケメンだけど既婚者の吉沢さんだった。


「今日、久我休みなんだって?」

「あ、はい……」

「仕事は、順調?」

「……あたしはちっとも順調じゃないですけど、他のみなさんはサクサクこなしてます」

「そうか……なんて報告しようかな」


報告……?

誰に、何を……?

< 60 / 249 >

この作品をシェア

pagetop