不器用上司のアメとムチ

吉沢さんはしばらく考えたあとで胸ポケットから携帯を取り出すと、あるメールを私に見せてきた。


差出人:久我毅

件名:うちのハムスター(ハムスターの絵文字)

本文:体調不良で会社を休むことになった。暇な時でいいから、うちのハムスターの様子を見てきてくれ。まだ何もできない役立たずだから、周りからの風当たりが強いんだ。
もし泣いてたら、優しい言葉のひとつでもかけてやってくれ。お前そういうの得意だろ。

それが効かなかったら、飴で餌付けすると元気になる。

追伸、暇でなかったら別にいい。




「な……なんですかこれ」

「なにって、朝久我から来たメールだよ。最初は意味がわからなかったけど、もしかしたらきみのことかなと思って」


……もしかしなくても、あたしのことだ。

久我さん、具合が悪いのにあたしのこと心配してくれてたんだ……

なんだか本当に保護者みたい。

いや、この場合飼い主というべきか。


画面を見ながらクスッと笑ったあたしを見て、吉沢さんが言う。


「なんだ、やっぱり両思いなんじゃないか」



………………はい?

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