不器用上司のアメとムチ
「誰と……誰がですか?」
この話の流れ。まさかとは思うけど……
「決まってるじゃないか。姫原さんと久我だよ」
――やっぱり、そうなるのね……
あたしの名字を正式に呼んでくれたのはあなたが初めてです!と握手を求めたいところだけど、それどころじゃない。
全力で誤解を解かなければ。
「あのう、吉沢さん……あたしの好みはあんなに汚いオジサンじゃありません。
しいて言うならあなた方の同期の京介さ……じゃなくて副社長みたいな見目麗しい男性なんですけど」
「……好みなんて、好きになってみたら関係なかったってこと多くない?しかも今姫原さんが言ったのは見た目のことだけだし」
吉沢さんは、余裕のある大人の笑みであたしにそんなことを訊く。
外見が全てではないと、あたしだって解ってるけど……いくらなんでも、久我さんはない。
「中身込みで、その可能性はないです。……それに久我さんだって、あたしなんかより好きな人が――――」
そうだ、思い出した。
あの写真の女の人……