不器用上司のアメとムチ
「ダメです!吉沢さんには家族がいるのに……!!」
思わず叫んでしまったあたしに、吉沢さんは一瞬きょとんとしてそれからクスッと笑った。
ああ、素敵な笑顔……
彼が既婚者でなければなぁ。
「……姫原さんは、いい子だね。大丈夫、俺はきみを飼い主の元に送り届けるだけだから。じゃあ18時半に、ここに迎えに来るから」
それだけ言うと、吉沢さんは颯爽と管理課を出ていってしまった。
後姿もいい男…………じゃなくて!
彼、なんかおかしなことを口走ってなかった?
飼い主の元に送るとかなんとか。
まさか……いやそんな。でももしかしたら……
いやな予感を胸の内で膨らませていると、突然お腹がぐうと鳴った。
「あ、ご飯……!!」
考えるのを一旦ストップして、あたしはコンビニへと急いだ。