不器用上司のアメとムチ

「断じてそんなことはあり得ません!」


あたしはきっぱり言い切ったのに、佐々木は納得してないよう口を尖らせて言う。


「じゃあどうして久我さん、休むって連絡をわざわざここにしてきたのかな……」


佐々木があたしのデスクの上の電話を指差す。


「別にただ誰でもよかったんじゃないの?」

「そうかな。普通は一番上の森永サンのトコにかけると思うんだけどな。……なんでわざわざ梅チャンに」


……そんなの、久我さん本人に聞いてよ。あたしは知らない。


「……ま、いいや。んじゃ俺は帰るけど、梅チャンは?」

「あ、あたしは約束があるから……」

「ふうん、じゃお先に」



佐々木が管理課を出ていくと、入れ違いみたいに吉沢さんがあたしを迎えに来た。


「お待たせ。もう出れそう?」


あたしに微笑みかけるその顔は、仕事終わりなのに昼間と変わらない爽やかさだ。

同期と聞いてから、どうしてもこの人と久我さんを比べてしまう。

うーん、つくづく神様って不公平。

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