不器用上司のアメとムチ
車内は、長い間気まずい静けさに包まれていた。
エアコンの風が鳴る音と、小さなボリュームで流れるFMラジオだけがその隙間をつないでいる。
……あたしに話があるから誘ったんじゃなかったの?
ちらりと吉沢さんの横顔を見ると、「暑い?」と聞かれたからあたしは首を横に振った。
……会話終了。
このドライブは一体何なんだろうとあたしが悶々としていると、何故か車はコンビニに入っていった。
「ちょっと待ってて」
吉沢さんはそう言うと、あたしを車内に残してお店に入っていってしまった。
なんだろ、喉でも乾いたのかな……
しばらくして帰ってきた吉沢さんの手には大きな袋。
「これ、あいつに渡して?」
あたしの膝の上にその袋を乗せた吉沢さん。
中身を覗いてみると、全部甘いお菓子やデザートだった。
甘いものが好きなあいつ……
なんとなく予想はしていたけど、やっぱりこれから連れていかれる場所って……