不器用上司のアメとムチ

皆がそれぞれの仕事について、一時間ほど経過した頃……久我さんが、あたしの様子を見に来てくれた。


「おー、よくこれだけ分けたな。……で、なんでファイルに閉じないんだ?」


一枚ずつ閉じるより書類を種類ごとに分けてからの方が効率がいいと気づいたあたしは、すべての書類を分別することに成功していた。

だけど……


「穴は、どうやって開けたら……」


ファイリングされている書類はどれも二つ穴が空いているけど、あたしが分けた書類にはそれがない。

だから、作業が止まってしまったのだ。


「梅……お前、こういうものの存在を知らないのか?」

「ちょっと待って下さい、梅って呼び方……!」

「あー、名字なんだっけ」

「ひめ!原です」

「……覚えにくい。とにかくだ梅、お前は穴開けパンチも知らないのか?」


む、む、むかつく……!

髪の毛が逆立ちそうな怒りに襲われながらも、あたしは久我さんの持つその穴開けパンチとやらのことは知らなかったから、仕方なく頷く。

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