不器用上司のアメとムチ

久我さんはその質問には答えず、切なげに瞳を細めてあたしを見た。


「お前なら……」

「…………?」

「お前なら、忘れさせてくれる気がするんだ――――小梅」


小梅、と呼ばれた瞬間、あたしの心が何かに感染した。

いつもは梅なのに、どうして今そんな風に呼ぶの……?


胸がぎゅっと締め付けられ、脳がこの人でいっぱいになり、身体の隅々まで熱くなってしまう……

この病をあたしは知ってる。



「……小梅」



だから抗わずに、目を閉じて唇が降りてくるのを待った。

アルコールに浸してたんじゃないかってくらい強いお酒の香りがする唇が触れたとき、今まで散々馬鹿にしてた“オジサン”は、あたしの中であっさりと“愛しいひと”になった。


……吉沢さんが知ったら、やっぱりねと笑いそうだ。


「ん……久我、さ」


大きな手は乱暴にあたしの衣服を剥ぎ、ブラはホックも外さず無理矢理に上にずらす。

こぼれ落ちたあたしの胸に、彼はいきなり歯を立てて噛みついた。

……まるで狼だ。

あたしは小さく悲鳴を上げ、目の前にある彼の固い髪をきゅっとつかむ。

痛いだけじゃなくちゃんと快感を得られるのは、きっとあたしがもうこの人に、本気で惚れてしまっているから……

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