不器用上司のアメとムチ
でも、だからこそ、気になることがある。
このまま流されてしまいたい気持ちももちろんあるけど、さっきの久我さんの言葉と、あの写真――……
その意味を聞いてからでないと、この先には進めない。
「……久我、さん」
あたしの胸に顔を埋めたままの彼に声を掛けてみる。……だけど、反応がなかった。
「久我さん……?」
背中をトントン叩いてみても、顔を上げない。
これは、まさか……
耳を澄ませば聞こえる安らかな寝息。
ゆっくり上下する背中。
「寝て、る……」
あたしは急に力が抜けて、なんだか笑えてしまった。
落ち着いて考えたら、久我さんとこんなことしてるなんて信じられない。
昨日までのあたしが見たらきっと倒れてしまう。
だけど……芽生えた気持ちに嘘はない。
その証拠に、彼の顔が乗っかっている心臓は、今でも速いリズムを刻んでいる。