不器用上司のアメとムチ
狼さんを起こさないようにそっと腕から抜け出し、乱れた服を整えてふうと息をつく。
落ち着いて部屋を見回してみると、外観のわりには綺麗な部屋だった。
きれいというか、物がないというか。
あまり掃除してないって言ってたけど、そこまでする必要もないのかも。
寝室にはベッドとクローゼットしか目立った家具はなくて、本とか雑誌とか、久我さんの趣味がわかるようなものもない。
あたしは彼のプライベートをちょっと探ってみたくなり、足音を立てないようにリビングに移動した。
「……こっちは汚いな……」
さっき扉の隙間から見えたお酒の山は、近くで見るとさらにすごかった。
ビールにワインに……ウイスキーの瓶まで空で、あたしはため息をつく。
こんなに飲んだら、そりゃああなるわよ……
「片付けても、いいかな……」
空き缶と空き瓶はとりあえず流しで洗って。
飲みかけのお酒はテーブルに置いたままでもいいかな……
男の人に尽くすのって慣れてなかったけれど、やってるうちに楽しくなってきて、おおかた片付いたテーブルをふきんで拭いているときには、鼻歌まで歌っていた。