不器用上司のアメとムチ
まだオジサンじゃない頃の久我さんが写ってたらいいなぁ……
呑気にページを捲ったあたしだけど、その指はすぐに固まってしまった。
確かに、若い久我さんはそこに写ってた。
白いタキシードを着て、隣の花嫁さんに優しく微笑みかけていて……どう見ても、結婚式のときの写真。
「この人……」
あたし……このお嫁さんを知ってる。
きっと、昨日拾った写真の……!
それを確かめたくて自分の鞄を探したけど見当たらなくて、寝室に置きっぱなしだと気づいたあたしはすぐに部屋を出た。
――――けれど直前であたしの足は止まった。
寝室から、目を覚ました狼がのっそりと出てきてしまったから……
「あ……起きたんですね」
まだ気だるそうな久我さんは、頭をがしがしと掻いてあたしを見る。
そして不吉すぎる発言で、あたしを凍りつかせた。
「ん……?どうしてお前がうちに居るんだ……」