不器用上司のアメとムチ
翌日、遅刻ギリギリに出勤したあたし。
「……おはようございます」
「ちょ、どしたの梅チャンその顔……」
一晩中泣き続けたあたしの顔がきっとひどいのだろう。
佐々木があたしの元へ来て、心配そうに顔を覗き込む。
「……なんでもない。セクハラオヤジにちょっと腹が立ってるだけ」
わざと本人に聞こえるような声で言い、あたしは淡々と仕事の準備を始める。
すると遠くで椅子を引く気配がして、ゆっくり足音がこちらに向かってくるのがわかった。
「……まだ、怒ってるのか」
「………………」
「悪かったよ」
「……何に謝ってるのかわかってないのに、簡単に謝らないでください」
とりつく島もないあたしの態度に、久我さんはため息をついた。
するとあたしたちの様子を眺めていた佐々木が、小声で久我さんに尋ねる。
「……一体何があったんすか?セクハラって……」
「いや……梅が昨日見舞いに来てくれたんだが、俺は酒に酔って何かしちまったらしい。でも、肝心の記憶がねぇんだ」
「――え!それって……」