不器用上司のアメとムチ
「学生の頃だって使っただろ……いくらお前が馬鹿でも」
梅、お前、馬鹿……あたしはどれだけこの人に見下されてるんだろう。
そしてこれからあたしが言うことを聞いたら、さらに呆れられそうな気がする。
確かに、学生の頃も課題のプリントなんかを閉じる作業はあった。だけど……
「そういうのは全部……男の人がやってくれましたから」
「……はぁ?」
「あたし、物心ついた頃からいつも男の人に囲まれてて、その人たちが何でも言うことを聞いてくれたから……」
久我さんは、おでこに手を当てて盛大なため息をついた。そして、疲れたように呟く。
「こりゃ、厄介なもん引き受けちまったな……」
「ごめん……なさい」
どうしよう。今のところ管理課であたしを受け入れてくれてるのは久我さんだけなのに、この人にまで見放されちゃったらあたし……
「謝る必要はねぇよ。お前がこうなったのは、周囲の人間のせいでもありそうだ。ただ、ここでは男を顎で使うなんてことはできねぇぞ?」
「わ、わかってます!」
いくらあたしが馬鹿でも、会社がそんな甘い場所じゃないことくらい知ってる。
京介さんの側に居た頃が、普通じゃなかったんだ。