不器用上司のアメとムチ
久我さん……一晩経っても、思い出してくれなかったんだ。
あーあ……
あのときの行為に感じてしまった自分が恥ずかしい。
ばかみたい。
好きになっちゃった気持ちは、後戻りできないのにさ……
胸のもやもやが晴れないまま管理課に戻ると、もうみんな静かに自分の仕事をしていた。
あたしも、いい加減気持ち切り替えなきゃ……
そう思ってパソコンの画面を睨むと、その端に付箋が張り付いているのが目に入った。
ピッと剥がして内容を確認すると、それは佐々木からの誘いで。
『こーゆーときは飲むに限る!梅チャンにはこないだ迷惑かけたし、そのお詫びにおごるから今晩どう?』
……お酒、か。
ある意味そのせいでこんなに悩まされてるわけだけど……悪くない誘いかも。
飲んで飲んで、久我さんの悪口全部吐き出してやる。
あたしはその付箋に“OK”とだけ付け足して、佐々木が席を立った隙に、パソコンに貼り付けておいた。
秘書課では嫌われてたから飲みの誘いなんてなかったし、京介さんと行く場合はデートだし。
同じ部署の同僚とお酒を酌み交わすって、初めてだから楽しみかも。