不器用上司のアメとムチ
「もう……何やってるんですか!」
「……頼むから、話をさせてくれ」
「……外でいいですか」
「こんな時間だ。近所迷惑だろう」
――――結局。
あたしは久我さんを部屋に上げ、彼のためにコーヒーまで出してあげる始末。
……惚れた弱味ってやつだろうか。
でも昨日のことはまだ許してない。
噛まれた胸の内側は……今でもズキズキ痛むから。
「――そろそろ教えてくれるか?俺の犯しちまったことがなんなのか」
リビングの白いソファに浅く腰かけた久我さんが訊いた。
そこから見えるキッチンで、立ったまま自分用のコーヒーに口を付けていたあたしは、もう一度だけ……彼に確認する。
「本当に……忘れちゃったんですか?」
「…………すまん」
答えはわかってて聞いたけど、やっぱり傷つくものは傷つく。
あたしはため息をついてから、マグカップをキッチンに置き彼の正面の床に腰を下ろした。