不器用上司のアメとムチ

うつむくあたしに、久我さんが訊く。


「……どうやって詫びればいい?」

「どうやって、って……?」

「何か食わせろとか、あれを買えとか、俺にできる範囲の償いならする……
今回はさすがに、飴でどうにかなるとは思ってねぇからな」



……そんな。

そんなの……いらない。

でも、どんな願いでもいいというなら……



「あたしと……付き合って下さい」



震える声で、あたしは言った。



「キスの責任、取ってください……」


「………………」



久我さんはずっと黙ったままだった。

やがてポケットから煙草を出して火をつけ、あたしにかからないように煙を吐き出すと、ようやく口を開く。




「……他の願いにしろ」




あたしを突き放すような、冷たい声。

この願いは、“できる範囲の償い”じゃないんだね……


思わず潤んでくる瞳。

久我さんはそんなあたしから目をそらすように立ち上がり、玄関の方へ歩いていってしまう。

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