不器用上司のアメとムチ
あたしが座ったままで涙をこぼしていると、廊下の半分くらいまで進んでいた久我さんが何故か戻ってきた。
「そういや……お前今日佐々木とどこ行ってた」
今さら何を言っているのか、そんな質問とともに。
「別に……どこでもいいじゃないですか」
彼の顔を見ずに、冷たく言う。
振られて泣いてる姿なんて見られたくないのに、なんで戻ってくるのよ……
「言えないような場所か?」
「……なんですかそれ」
「……アイツと寝たのかって聞いてるんだ」
あたしは、思わず久我さんの顔を見た。
一体どこをどう考えたら、あたしと佐々木がそんなことに……?
「そんなわけないじゃないですか……焼き肉食べただけです」
「…………なら、いい」
そう言ってあからさまに安堵した表情を見せる久我さん。
なにそれ……
嫉妬……?
あたしのこときっぱり振っておいて、そんな期待させるような言動やめてよ……